30年ぶりにF1タイトルを獲得したHonda、7年間の活動に終止符

ホンダF1の山本雅史マネージングディレクター、レッドブルモータースポーツ・アドバイザーのヘルムート・マルコ氏とマックス・フェルスタッペン【アブダビGP/ヤス・マリーナ、2021年12月12日(Getty Images / Red Bull Content Pool)】


最終戦、ファイナルラップでのバトルを制したマックス・フェルスタッペンが、2021年シーズンのF1世界チャンピオンに輝き、歴史に残る戦いでシーズンを締めくくった。

ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンは、7コーナーでルイス・ハミルトン(メルセデス)とのバトルでオーバーテイクしたが、コーナーをカットしたハミルトンが先行を維持してコースに復帰。審議の末、ハミルトンにポジション維持を許すこととなり、フェルスタッペンは1周目に2番手にポジションを落とした。その結果、レッドブルは13周目にピットインし、ハードタイヤに変更、アグレッシブな戦略を取ることに。

直後にハミルトンもピットインすると、ピットストップを行っていなかったセルジオ・ペレスがソフトタイヤでトップに浮上。フェルスタッペンとハミルトンとのギャップを縮めるため、ペレスはハミルトンを抑え込みながら走行する素晴らしいパフォーマンスを披露している。

その後、オーバーテイクされたペレスは22周目に1回目のピットストップを行い、ハードタイヤに変更。続いてアルファタウリの角田裕毅が1周遅れでピットインし、スタート時のミディアムタイヤからハードタイヤに履き替えた。ハードタイヤでスタートしたピエール・ガスリーはピットに入らず、ステイアウトしてトップ6まで浮上し、レースが落ち着くまで走行を続けた。

最初の混乱が起きたのは35周目。アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ・レーシング)がコース上でマシンを止めてしまい、バーチャルセーフティカーが導入された。フェルスタッペン、ペレス、ガスリーが少ないタイムロスでピットストップ。レッドブルの2台は再びハードタイヤに変更し、アルファタウリのガスリーは異なるタイヤコンパウンドの装着義務のためにミディアムタイヤへ変更した。

レース再開後、ハミルトンとの20秒のギャップを少しずつ縮めていったが、追い付くには至らず。そんな中、残り6周でニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)がクラッシュしたことで事態は一転。クラッシュによりセーフティカーが導入されると、ポジションキープのためにハミルトンはピットストップを行うことができずステイアウトを選択。フェルスタッペンとペレスに続き、角田とガスリーもピットイン。ペレスはPUのデータに異常を確認して、そのままリタイアとなったものの、3台はソフトタイヤに変更してレースをリスタートした。

審議の後、レースは残り1周で再スタートを切り、チャンピオン獲得を目指すフェルスタッペンに残されたのはたった1周、16コーナーだけだった。しかしながら、フェルスタッペンは5コーナーでハミルトンを見事オーバーテイクし、9コーナーで抜き返しを図るハミルトンに対してすばらしいディフェンスを見せ、見事に抑えたフェルスタッペンが、予想もしなかったレースのファイナルラップの戦いにより、今シーズンのチャンピオンを獲得した。

残念ながらリタイアとなったペレスだが、レースの中ではフェルスタッペンを助ける走りですばらしい貢献を果たした。そしてアルファタウリは角田4位、ガスリー5位と2台共がトップ5を獲得し、すばらしい成績をおさめた。コンストラクターズチャンピオンシップで5位にはわずかながら届かなかったが、今シーズン最高位の成績を収めた角田は最終戦、ルーキーシーズンの集大成ともいえるレースで、ここ一番の活躍を見せた。

初めて世界チャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペンには世界中から注目が集まっている。1981年にアイルトン・セナが初めて獲得してから、Hondaとして6度目のチャンピオン獲得により、F1最後の年を最高の結果で締めくくることができた。

田辺豊治(Honda F1テクニカルディレクター)

「2021年最終戦、アブダビGPが終了しました。Red Bull Racing Hondaのフェルスタッペン選手が優勝して、ドライバーズチャンピオンシップを獲得しました。Hondaは2015年からF1に参戦し、チャンピオンを目指しここまで挑戦を続けてきました。Honda F1参戦最後の年、最終レース、ラストラップでRed Bullのフェルスタッペン選手がトップに立ち、チェッカーを受けました。我々の努力と挑戦が報われ、本当に感無量です。チームメイトのペレス選手については、PUのデータに異常が見られたため、最終盤にリタイアせざるを得ず、非常に残念に思っています。ただ、レースを通して、昨日に続いてすばらしいチームプレーを見せてくれました。Scuderia AlphaTauriの2台は、週末を通し見せていた、いいパフォーマンスをレースでも発揮してくれました。角田選手は4位、ガスリー選手は5位と、今年一番の結果になりました。角田選手は、F1初挑戦の今シーズン、最終戦で今まで積み重ねた経験を十分に発揮し、ベストリザルトにつなげてくれました。すばらしいドライビングだったと思います。ガスリー選手も、12番手スタートからいいパフォーマンスでポジションを上げ、AlphaTauriとしていい結果でシーズンを締めくることができたと思います。残念ながらコンストラクターズチャンピオンシップは逃しましたが、フェルスタッペン選手とともに、ドライバーズチャンピオンシップを獲得できたことを、本当にうれしく思っています」

「今回のプロジェクトの7年間は、さまざまな苦労と喜びがありました。その中で、HRD-Sakura、HRD-UKをはじめとして、オールHondaのエンジニアやメカニックが決してあきらめることなく開発を続け、いくつもの技術的なブレイクスルーを成し遂げてきました。地道な 研究と努力の結果が実を結んだと思っています。また、我々とともに戦ってくれたRed Bull RacingとScuderia AlphaTauriのメンバー、そしていままで一緒に戦ったすべてのドライバーに感謝の気持ちを伝えたいと思います。そして、苦しい時でもサポートを続けていただいたファンの皆さまにも、感謝を申し上げます。これでわれわれの挑戦は終わりますが、この経験は、将来のHondaの技術に必ず生きると確信しています。Hondaはこの先も、あらゆる領域での技術への挑戦を続けていきます。本当にありがとうございました」

山本雅史(Honda F1マネジングディレクター)

「やりました! 念願のチャンピオンです!!皆さんと一緒に取ったと思っています。今日は本当に劇的なレースで、最後の最後にチャンピオンが決まった形ですが、最後までもつれた今シーズンを凝縮したような結末で、メンバー全員が感動をもらいました。私自身、『とてつもなく高いゴールであっても、挑戦を続ければいつか夢はかなう』と、今日のレース、そして今回のプロジェクト全体を通して実感することができました」

「そして、今日のレースをもって、HondaのF1プロジェクトが終了となりました。高度なハイブリッド技術を使用した新PUレギュレーションの導入に伴い、われわれは2015年からPUサプライヤーとしてF1に復帰し、今日まで7シーズン、合計141戦を戦ってきました。ほかのライバルに比べると短い開発期間で参戦したこともあり、参戦当初は非常に苦戦し、どん底と呼べるような時期も味わってきました。それでも、コロナ禍などの困難も乗り越えて、最終年となった今年は強力なライバルを相手にチャンピオンシップを戦 うなど、世界の頂点をかけて戦うところまで来ることができました。苦境にあっても常に前を向きながら地道に開発を続け、数々のブレイクスルーを果たしてきたエンジニア・メカニックたち一人ひとりの努力が実を結んだと思っており、Hondaの意地を見せるとともに、技術力の高さを証明することができたと感じています」

「もちろん、ここまで来られたのは、われわれの力だけによるものではありません。一緒にチャンピオンシップを戦ってきたRed Bull Racingはもちろん、苦境にあったわれわれを明るさとともに迎え入れてくれたScuderia AlphaTauri、今回のプロジェクトを一緒にスタートしたMcLaren Racingや、常にトップを目指し全力を尽くしてくれたすべてのドライバーたちなど、誰一人を欠いても今日のHonda F1に至ることはありませんでした。すべての仲間たちの情熱が、今のHonda F1を築いてきました」

「なにより、もっとも感謝をしたいのは、いい時も悪い時も熱い声援とともにわれわれを支えてくれたファンの皆さまです。先が見えない状況で、くじけてしまいそうな時でも、皆さんの強い後押しにより前を向くことができたメンバーは、私一人ではないはずです。私自身、皆さんと一緒にPower of Dreamsを体現するんだという思いとともに、いつもレースを戦ってきました。少しでも多くの皆さんと、勝利の喜びや、負ける悔しさを共有し、『いつか世界の頂点に立つんだ』という夢を実現できたのであれば、これ以上うれしいことはありません。改めて、HondaのF1プロジェクトに関わり、サポートしてきてくれたすべての皆さまに、この場を借りて感謝の言葉を送りたいと思います。本当にありがとうございました」

「今回のわれわれのプロジェクトを『成功』と呼べるのかはわかりません。ただ、このチャレンジが皆さまの記憶に残り、今後、皆さま自身が夢に向かってチャレンジする際に、少しでも勇気を与えるようなことがあるのであれば、それは私たちHondaにとっては一つの成功であると言えるのかもしれません」

「われわれのF1での冒険は、残念ながら今日のアブダビでのレースをもって終了します。ここからHondaは、F1で培った技術力や人材の力を用いて、カーボンニュートラルに対する取り組みという、新たなチャレンジに向かうことになります。また、F1でもRed Bull RacingとScuderia AlphaTauriが、われわれの開発したPUの使用を続けていくことになります。これまでとは異なった領域、チャレンジになりますが、新たなチャレンジに対し、皆さまからご声援をいただけますと幸いです」

(Honda Racing F1 Team プレスリリースより)